アルトコインのコンセンサスアルゴリズムの種類・特徴・比較

この記事ではアルトコインに利用されるコンセンサスアルゴリズムの種類とその比較しています。

コンセンサスアルゴリズムとは?

コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックチェーンを構成する各ノード間で行われる合意形成の方法のことを指します。

これがなぜ重要なのかというと、この合意形成方法にしたがって「生成されたブロックを承認するどうか」ということを決定するからです。

アルトコインを含む暗号資産(仮想通貨)では、暗号化技術とブロックチェーンがその根幹を支える重要な要素であり、そのコイン自体の継続性や信頼性、セキュリティまでも決定づけます

そういった意味で、アルトコインに投資する際にコンセンサスアルゴリズムを理解していることは重要です。

この記事では、特に時価総額の高いアルトコインに利用されているコンセンサスアルゴリズムの種類とそれらの特徴について比較してみます。

アルトコインの時価総額TOP10のコンセンサスアルゴリズム

それではアルトコインの時価総額TOP10で利用されているコンセンサスアルゴリズムの種類を確認してみます。

それぞれの略語は下記の通りです。

  • PoW (Proof of Work):プルーフ・オブ・ワーク
  • PoS (Proof of Stake):プルーフ・オブ・ステーク
  • NPoS (Nominated Proof of Stake):ノミネーティド・プルーフ・オブ・ステーク
  • PoR (Proof of Reserve):プルーフ・オブ・リザーブ
  • PoC (Proof of Consensus):プルーフ・オブ・コンセンサス
  • Multi-BFT (Multi-Byzantine Fault-Tolerant):マルチ・ビザンチン・フォールト・トレランス

アルトコインの時価総額TOP10とそのコンセンサスアルゴリズム

順位アイコンコイン時価総額[兆円]コンセンサスアルゴリズム
1Ethereum/ETH21.2PoW → PoS (Casper)
2Tether/USDT4.4PoR [Omni, ERC-20]
3Binance Coin/BNB4.3PoS
4Cardano/ADA4.1PoS (Ouroboros)
5Polkadot/DOT3.2nPOS (GRANDPA / BABE)
6XRP/XRP2.7PoC
7Uniswap/UNI1.6– [ERC-20]
8Litecoin/LTC1.3PoW
9THETA/THETA1.3Multi-BFT
10Chainlink/LINK1.2– [ERC-20]
時価総額は2021年3月28日現在のデータ。Source: CoinMarketCap
[]内はプラットフォーム、()内はプログラム名。

コンセンサスアルゴリズムの概要

次に上記のアルトコインに利用されるコンセンサスアルゴリズムの概要をざっくりと確認します。

どんな人に発言権が与えられるか、不正をどのように回避するのか、システムの持続性がポイントです。

実際は個々のアルトコインによって若干システムが違います。

PoW (Proof of Work):プルーフ・オブ・ワーク

PoW(Proof of Work, プルーフ・オブ・ワーク)とは、マイニングの源であるCPUの計算量に応じて発言権を与えるシステムです。

マイニングとは、取引を記録するブロック形成に必要な「ナンス値」を見つけるための計算を意味します。

ブロック形成に成功したマイナーには、報酬が支払われることで継続的なマイニング動機を与えます

このシステムは、善良なノードで構成される場合には、ブロックが形成されるごとに過去データの改ざん可能性が指数関数的に難しくなるため、基本的には過去データの改ざんは難しいです。

悪意のあるものが改ざんするには過半数以上の計算量を保持する必要があり、データ改ざんするよりもその計算量でマイニング報酬を得る方がメリットがあると判断される限り安全です。

しかし、特に直近データの改ざんに対してより脆弱性があり、過半数以上の計算量を持ったものの攻撃(51%攻撃)によって、過去取引が上書きされる「二重支払い」による被害が頻発しています。

また、報酬を求めて計算競争が激化すると電気代が高騰すること、将来的にそのコストがマイニング報酬を上回るとマイニング動機が損なわれる懸念があります。

このシステムでのメリット・デメリットは下記の通りです。

PoWのメリット
  • 過去データの改ざんが困難
PoWのデメリット
  • 悪意のあるものが計算量を持つと改ざんされる
  • 取引数が増えると計算量が膨大になる(電気代高騰、取引遅延)

PoS (Proof of Stake):プルーフ・オブ・ステーク

PoS (Proof of Stake, プルーフ・オブ・ステーク)とは、通貨の保有量が多いほどブロックを生成できる確率(発言権)が高まるシステムです。

ブロック形成をする人は、通貨の保有量(と保有期間)によって確率的に選定されるため、PoWのように計算量の競争による悪影響(取引遅延・電気代コスト増大)が回避されるという特徴があります。

PoSと同様にブロックを形成した人には、報酬が与えられステーキング動機を与えます。

このシステムでは、悪意を持つ者も通貨を長期に大量に保有しなければならないため、自らの持つ通貨の価値を下げる行為をするのは合理的ではないということでリスクを下げています。

一方で、発言権を持つために通貨を長期に大量に保有するものが増えると、アルトコイン自体の流動性が低下し、通貨としての機能自体が低下するリスクを抱えています。

特に、時価総額の低いアルトコインで大金持ちが大量購入するとこの現象に陥る可能性が高くなります。

PoSのメリット
  • 計算量が少なく取引承認が早く、コストが少ない
PoSのデメリット
  • 大量資金を持つものに権利が集中する可能性がある
  • コインの長期大量保有により、流動性が低下するリスクがある

NPoS (Nominated Proof of Stake):ノミネーティド・プルーフ・オブ・ステーク

NPoS (Nominated Proof of Stake, ノミネーティド・プルーフ・オブ・ステーク)とは、PoSの改良版で通貨保有量によって重みづけをした投票を行い、そこでブロック生成者(バリデーター)を決定するシステムです。

ネットワーク参加者の多くはノミネーター(投票者)となり、自らのコインをロックして優良なバリデーターに投票し、システムの健全性を保ちます

類似したより広義の概念として、DPoS(Delegated Proof of Stake, デリゲーティド・プルーフ・オブ・ステーク)がありますが、このシステムとの違いは、ノミネーター自身が悪意のあるバリデーターに投票した場合、コインを失う可能性があることです。

このことはバリデーター選定に対する一定のセレクション基準が入るため、高いセキュリティが担保されます。

バリデーターも自らのコインをロックする必要があり、不正を働いた場合はこれらが没収される仕組みになっているため、セキュリティ対策が可能となると理解されています。

NPoSのメリット
  • PoSの改良版でより高いセキュリティを実現しうる
  • 投票によってPoSの持つ権利集中リスクは分散される
NPoSのデメリット
  • 意図せずして悪意のあるバリデーターに投票すると資産を失う
  • PoSの流動性リスクは残る

PoR (Proof of Reserve):プルーフ・オブ・リザーブ

PoR (Proof of Reserve, プルーフ・オブ・リザーブ)とは、管理会社が新規コイン発行・コイン回収権を有しており、ユーザーによる担保通貨の出し入れに応じて、そのアルトコインを発行・消失させるシステムです。

この方式を採用するTetherは、ビットコイン上のプラットフォームであるOmni、イーサリアム上のプラットフォームERC-20上で発行されているため、取引記録とその承認等はそれぞれのプラットフォームに依存します。

Tetherは1ドル=1テザーとなるようなドルのペッグ通貨として管理されており、コイン価値が担保によって安定しやすい特徴があります(ステーブルコイン)。

一方で、PoRでは管理会社がコインの発行・消失を行うため、管理会社の信用と透明性が重要です。

実際、2018年にTether社の担保管理方法に疑念が生じるという事件が起きました。

PoRのメリット
  • アルトコインの価値が安定しやすい
PoRのデメリット
  • 管理会社の信用と透明性に依存する

PoC (Proof of Consensus):プルーフ・オブ・コンセンサス

PoC (Proof of Consensus, プルーフ・オブ・コンセンサス)とは、事前に設定されたバリデーターによって取引承認が行われるシステムです。

バリデーターとは、取引検証者の意味で、全体の80%が承認すると取引が成立するようになっています。

全バリデーターのリストはあらかじめ管理会社によって設定され、バリデーター同士で承認し合うことでネットワーク形成をしています。バリデーター内で承認がもらえないと、ネットワークから除外されます。

PoSと同様に、PoWのリスクを回避可能で、数秒以内に承認が完了するため、非常に速い取引が可能になります。

このシステムでは、バリデーターが管理会社によって指定され、サーバーもその管理会社のものが利用される特徴があるので、中央集権的な特性があると言ってよいでしょう。その点では、PoRと同等のリスクを有します。

PoCのメリット
  • PoWのリスクを回避できる
  • 取引スピードが非常に速い
PoCのデメリット
  • 管理会社の信用と透明性に依存する

Multi-BFT (Multi-Byzantine Fault-Tolerant):マルチ・ビザンチン・フォールト・トレランス

Multi-BFT (Multi-Byzantine Fault-Tolerant, マルチ・ビザンチン・フォールト・トレランス)とは、少数のバリデーターによって承認された取引を、数千のガーディアンで適宜チェックしてチェーンを完成させるシステムです。

これはPBFT(Practical Byzantine Fault-Tolerant)という既存アルゴリズムを改良したものです。

PBFTは、「P2P上における、通信やノードの故障、悪意のあるノードが存在する場合に、全体として正しい合意が形成できるかを問う問題」というビザンチン将軍問題を解決するために考案されました。

PBFTの合意形成プロセスは、若干複雑ですが、簡単に流れを見ると

  1. バリデーターの中から1つ(リーダーになる)が取引情報を受け取る
  2. リーダーが他のバリデーターに情報を送る(ブロックができる)
  3. 改ざんチェックをして結果をバリデーター間で共有
  4. Step3で一定数の改ざんチェックが済むと「情報が正しい」ことをバリデーター間で共有
  5. Step4の内容が共有されたところで承認作業を開始
  6. 一定数の承認が台帳に記載されたところで、ブロックが承認される

Multi-BFTでは、PBFTのように20-30のノードで検証したのちに、特定のチェックポイントで数千のカーディアンノードで監視を行うような仕様になっています。

Multi-BFTの特徴としては、PoWやPoSのような大規模な計算処理が必要ないことでブロック自体は迅速に生成され分岐もしないという性質があります。このことは、迅速な取引と良好なスループットに繋がります。

また、PBFTにはなかった複数のチェックポイントシステムを導入することで、セキュリティ面での改良が加えられています。具体的には、PBFTでは1/3以上のバリデーターが悪意のあるノードがあると二重支払いの可能性がおきますが、Multi-BFTではガーディアンでもさらに1/3以上の悪意のあるノードがない限り安全です。

バリデーターとガーディアンには、ブロック形成時点でそれぞれ異なる形で報酬が支払われることで参加動機が促されています。また、バリデーターとガーディアンは自ら保有するコインを一定額以上、かつ、一定期間ロックする必要があり、ステーキング額に応じて、得られる報酬が変化します。この点はPoS的な性質を持っています。

イメージとしては、改良版PBFTとPoSを融合させた形と言えるでしょう。

Multi-BFTのメリット
  • PoWの有するリスクを回避できる
  • PBFTとPoSのいいとこ取り
  • 取引スピードを維持しつつ、一定のセキュリティレベルを維持できる
Multi-BFTのデメリット
  • バリデーターになるには大量の資金が必要なため、権利集中の懸念あり

アルトコインのコンセンサスアルゴリズムの比較

アルトコインでよく使われるコンセンサスアルゴリズの概要について確認できたところで、それぞれを比較してみます。

比較のポイントとしては、

  • ノード管理
  • ファイナリティ(取り消し不可能性)
  • 取引処理速度
  • スケーラビリティ(拡張性)
  • 外部攻撃リスク
  • コスト
  • 継続性

です。

PoRは若干性質が違いますので、この比較では除外しています。

アルトコインのコンセンサスアルゴリズムの比較

項目PoWPoSNPoSPoCMulti-BFT
ノード管理分散型分散型分散型非分散型分散型
ファイナリティ確率的確率的確定的確定的確定的
処理速度
スケーラビリティ
リスク容認< 51% (< 25%)< 51%< 33%*運営による< 33%
コスト
継続性運営による
DOI:10.1109/INDIN.2018.8471939Corpus ID: 52896120 より一部情報を参考に作成。
*NPoSより広義のDPoSでは<51%と言われています。

これらの特徴は明確に何が優れているというのは難しい部分はあります。

その理由は、そのアルトコインが何を実現したいのかによって重要視される部分が異なるからです。

例えば、決済手段では支払い時に即座に取引が完了する必要があるのでその速度の重要度が高まりますし、狭いコミュニティで利用する場合は分散型にして外部リスクに晒す必要もありません。

ある程度色々な目的で使用されて取引速度が速く、かつ、セキュリティ面を担保するという意味ではPoSをベースにした改良版のNPoSが有望なのかなとわたしは考えています。

  • ファイナリティが確定的なのは過去データが改ざんできない
  • 分岐リスクに対してはノードへの制裁でコントロール
  • 一定の取引処理速度は必要
  • コストも考慮した継続性を考えられるか

この辺りが判断要因です。

コンセンサスアルゴリズムは重要です

この記事では、アルトコイン時価総額TOP10で利用されるコンセンサスアルゴリズムについて、その種類と特徴を概説し、それらを比較してみました。

コンセンサスアルゴリズムはそのアルトコインの性質を決める重要なポイントの1つです。

細かい技術的な点を理解するのは専門家でないと困難ですが、ざっくりとした特徴を把握することは投資にとっては重要だと考えています。

今回ご紹介できたのはほんの一例であること、ここのアルトコインは基本となる形から改良を加えた形にしている場合も多いことから個別の細かい点に触れていないことはご承知おきください。

ご自身で調べる場合には、ここに示したような項目を意識してホワイトペーパーや公式サイトを参照すれば、なんとなくは理解できると思います。

わたしも引き続き学び、記事にしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それではあなたの投資が上手くいくことを祈っています。

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