この記事では、アルトコインの中でもスマートコントラクトのプラットフォームを提供するコインの種類・特徴とその比較をしています。
目次
スマートコントラクトとは?
スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で事前に設定されたプログラムに基づき、条件を満たす入力をきっかけに自動で実行されるプログラムのことを指します。
この自動実行プログラムを利用して、取引に紐づく契約の締結・履行ができるというのが1つの特徴です。
この仕組みは、提唱者のNick Szabo氏が例とした「自動販売機」でよく説明されています。
あなたは自動販売機で、価格を確認してから商品の選択・代金の支払いをすることで商品を自動で受け取ることができます。これは「販売契約」が成立したことを意味します。
この一連の流れは、
- 契約の事前定義:商品選択と規定代金が払われたら商品を提供
- 条件入力(契約締結):ボタンを押す+代金を払う
- 契約履行:決められた商品を取り出し口へ
- 決済:商品を受け取る
というスマートコントラクトと同様の仕組みで成り立っています。
スマートコントラクトの特徴
スマートコントラクトにはどのようなメリットがあるでしょうか。
スマートコントラクトを象徴するキーワードとしては、「ブロックチェーン上」「自動化」があり、これらを反映したメリットが想定されます。
ブロックチェーン技術と分散台帳を用いた仕組みにより、基本的は改ざんが困難とされています。(ただし、絶対的な安全が保証されている訳ではないと考えています。詳細はこちらの記事で。)
また、契約が自動実行されるため、第三者の介入がなくて済むメリットがあります。このことは、管理者への「信頼」必要としないだけでなく、管理費用や手数料といったこれまでの必要経費が削減されるメリットがあります。
こういった特徴から、不動産取引やクラウドソーシング、IoT分野ではすでに活用されています。
スマートコントラクト系アルトコインの種類
2021年4月3日現在で、65種類のスマートコントラクト機能を有するアルトコインを見つけることができました。
CryptoSlateによれば、スマートコントラクト市場はおよそ$409.85B (約45兆円)で、暗号資産(仮想通貨)市場のおよそ21%に相当します。
スマートコントラクトに分類されるアルトコインは、アルトコイン全体の中でも時価総額の高いものが多いことが特徴です。
スマートコントラクト機能を有するアルトコインの時価総額TOP10は下記の通りです。
スマートコントラクト系の時価総額TOP10(2021年4月3日現在)
*仕様上、5位のKlaytn/KLAY (時価総額:$9.6B) を表示できていません
Please enter CoinGecko Free Api Key to get this plugin works.スマートコントラクト系アルトコインの比較
それでは、時価総額TOP10のスマートコントラクト系アルトコインについて、その特徴を比較してみます。
比較のポイントは、
- 時価総額
- 利用目的
- コンセンサスアルゴリズム
- 取引処理速度
- 分散度
- その他特徴
スマートコントラクト系アルトコインの比較 *右にスライドできます。
順位 | コイン | 時価総額[兆円] | 目的 | コンセンサス アルゴリズム | 処理速度[tps] | 分散度 | その他特徴 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | Ethereum/ETH | 27 | DApps開発 | PoW→PoS (Casper) | 15-25 | 高 | 最大のコミュニティ |
2 | Polkadot/DOT | 4.6 | チェーンの連結 | nPoS (GRANDPA / BABE) | 1,000,000 | 高 | Web3.0の実現が目標 |
3 | Cardano/ADA | 4.3 | DApps開発 | PoS (Ouroboros) | 50-250 | 高 | アカデミック要素が強い、DeFi |
4 | Stellar/XLM | 1.2 | 資金管理・送金 | FBFT (SCP) | 1,000 | 低 | 個人送金想定、2-5sで完了 |
5 | Klaytn/KLAY | 1.1 | ブロックチェーンの拡大 | PoC | 3,000 | 中 | 専門知識なしで利用できる |
6 | TRON/TRX | 0.80 | デジタルコンテンツの配信・保存・所有 | DPoS | 2,000 | 高 | 取引手数料ゼロ、個人ICO可能 |
7 | VeChain/VET | 0.69 | 企業でのチェーン活用 | PoA | 10,000 | 低 | IoTとの親和性が高い |
8 | EOS/EOS | 0.65 | DApps開発 | DPoS | 6,000 | 中 | ETHのスケーラビリティ解決が目標 |
9 | Cosmos/ATOM | 0.52 | チェーンの連結 | PoS | 10,000 | 高 | Web3.0の実現が目標 |
10 | Tezos/XTZ | 0.45 | DApps開発 | DPoS | 40 | 高 | 自己修正暗号化メカニズム |
スマートコントラクト系の特徴を一様に比較するのは非常に難しいです。
その理由は、その開発目的がアルトコインごとに異なっており、その性質はそれぞれの目的に応じた形で開発されているからです。
上記のリストに記載した通り、その応用に応じて概ね下記のような分類があります。
- DApps開発
- クロスチェーン
- 送金
例えば、分散型アプリ開発を目指すものは、そのチェーン上で新たに作られるトークンの自由度が求められるでしょうし、送金系では多少の分散型を犠牲にしても処理速度が求められるといった側面があると考えられます。
DApps開発
DApps(分散型アプリ)とは、中央管理者なしで不特定多数の者が自律的に行動した結果、全体のシステムが機能するようなアプリケーションです。
その代表は、やはりイーサリアム(ETH)でしょう。
イーサリアム(ETH)は、長い間開発が継続されており、ビットコインに次いで時価総額の高いアルトコインです。それ故、開発者コミュニティも大きく技術的な改良が続いています。一方で、処理速度が遅いため、取引量が多くなるほど手数料が高騰する問題がすでに顕在化しています。現在は、ETH2.0というアップグレードの進行過程で、その行方が注目されています。
近年、時価総額が急上昇し注目を集めるのがカルダノ(ADA)です。
カルダノ (ADA)は、数学者チャールズ・ホスキンソン氏が創始者として知られ、学術的にそのシステムが検証されているアルトコインです。この点は他のアルトコインとは一線を画します。開発段階としては、3/5が進行中でまだまだ開発途上のコインです。最終目標は、「革新的なブロックチェーンソリューションを通じて、従来の金融分野で独占的に提供されていたサービスをよりアクセスしやすく、包括的にすること」を掲げており、DeFi分野での活躍が期待されます。
個人的には、コスモス(ATOM)も気になっています。。。
クロスチェーン
クロスチェーンとは、開発規格の異なるブロックチェーン同士を連結することで、相互取引を可能とするシステムのことです。
例えば、異なるアルトコイン同士は通常どこかの取引所を利用する必要がありますが、これは特定の管理者が運営するもので、利用に際して多くの手数料が必要です。
一方、クロスチェーンが実現されると、ブロックチェーン上での直接的な交換が可能になり、その分、管理費用がかからなくなったり、個人情報を管理者に提供する必要がなくなります。
このようなクロスチェーンによって、インターネットの民主化を意味するWeb3.0が実現されると言われています。
その代表格は、ポルカドット(DOT)です。
ポルカドット(DOT)は、イーサリアムの共同創設者ギャビン・ウッド氏が創設に関与していることから大きな注目を集めました。現在も開発途中ですが、理論上は1秒間に100万ものトランザクション処理が可能だと発表されています。相互運用の実現に加えて、スケーラビリティ問題への対処、オープンガバナンスなどが評価されて、近年では価格が急上昇しています。
*スケーラビリティ問題:簡単に言うと、チェーン上に一定以上の取引が集中して、取引処理の遅延や手数料の高騰が起きてしまう問題です。
送金
これは文字通り、送金を目的にしたジャンルです。
スマートコントラクトと送金を組み合わせるメリットは、今まで売買契約を対面で結んでいたようなものが、非中央集権化されることです。
ただ、上記の目的でというよりは、単なる送金手段として開発されていることが多いようです。
代表例として、ステラ・ルーメン(XLM)を挙げておきます。
ステラ・ルーメン(XLM)は、リップル社の元開発者・共同創業者であるジェド・マケーレブ氏によって開発されました。目的は「個人の国際送金」がメインです。新興国など十分な金融サービスにアクセスできない人への解決策として提示されました。管理をステラ開発財団による中央集権的なものにすることで、国際送金を素早く安価な手数料で行えるという特徴があります。
スマートコントラクト系アルトコインの将来性
スマートコントラクト機能を有するアルトコインは、他の機能と比較しても成長性は大きいと予想しています。
その理由は、
- 圧倒的な利便性がある
- 金融市場の民主化に潜在的ニーズがある
- 多くの応用例がスマートコントラクトを前提としている
が代表的なところです。
一方で、課題として気になる点は、
- 契約書はコードになる
- 曖昧な内容や解釈を要する免責条項は設定困難
- 人的なリスクは避けられない
といったところでしょうか。
契約書がコードで記載されることになり、一度チェーンに流れると基本変更ができません。開発言語を学ぶことに加えて、コードにバグがあれば大変なことになりかねません。
また、通常の契約書では、「〇〇な場合には、△△しない場合もある」のような曖昧な表現や免責事項に関する記述はコードで表現することが難しいため、このような点にニーズを持つビジネスへの応用などは今後も難しいでしょう。
また、コントラクト自体が書き換えられるリスクも完全にゼロではないし、プログラムを作り上げるのは人です。
それぞれのアルトコインが持つプラットフォームの特徴とそれに付随するサービスを理解した上で、自由度と安全性のバランスを考慮することが重要になってくると考えられます。
スマートコントラクト系アルトコインの購入方法
最後にスマートコントラクト系アルトコインの購入方法について確認しておきます。
まず、この記事で扱った時価総額の高いアルトコインのうち日本の取引所で購入できるものは下記の通りです。
日本の取引所・販売所で購入可能
Ethereum/ETH、Stellar/XLM、Tezos/XTZ
時価総額TOP10のうち、購入できるのは3種類のみですね。
イーサリアムはどこでも買えますので取引所選びは気にする必要はありません。
ステラとテゾスの取り扱い取引所は限定されています。下記に国内の取引所・販売所を比較していますので、購入を検討される方は開設口座も選びましょう。
▶︎【2021年版】国内22社のアルトコイン向け販売所・取引所を比較
他のランキング上位のコインを購入しようとする場合は海外取引所を利用する必要があります。
わたし自身は海外取引所としてはBinanceが安定だなとは考えています。
▶︎アルトコイン投資でおすすめの海外取引所がBinanceである理由
ただし、海外取引所については下記のような記載が金融庁HPにありますので、くれぐれも自己責任にてご判断ください。
[参考 日本語のウェブサイトを設けていた海外事業者と取引した方向けの留意事項]
日本語ウェブサイトを設け、日本人の顧客を誘引していた者のうち、一部事業者においては、日本語ウェブサイトを閉鎖し、日本に居住する日本人との取引を停止するケースも出てきています。海外事業者に関連する取引がある場合、当該取引は、法令に適合した、法令上問題ない取引関係へと速やかに移行していただくようお願いします。
https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/index.html 金融庁HP 暗号資産に関するトラブルに御注意ください!
スマートコントラクト系アルトコインに期待
スマートコントラクトは、取引のスタンダードを変える可能性を有する技術です。
それぞれの開発目的は異なりますが、特に、クロスチェーン機能を有するものは今後のインターネット自体を変えるポテンシャルがあります。
現状は開発途上で様々なリスクがあります。
これらのリスクとポテンシャルを天秤にかけて、投資するか否かの判断をしていきたいものです。
くれぐれもリスクの取りすぎにはご注意を。
それでは。