この記事では、Binance(バイナンス)のLiquid Swap(リキッドスワップ)を使って効率よく運用する方法について解説しています。
目次
Liquid Swap(リキッドスワップ)とは?
Liquid Swap (リキッドスワップ)とは、暗号資産/仮想通貨の取引所であるBinance(バイナンス)によって提供される自動マーケットメーカー(AMM, Automated Market Maker)で稼働する通貨交換システムのことです。
ざっくりいうと、自動で運営されている通貨交換所です。
ここでは概念図でその仕組みを簡単に解説しておきます。
Liquid Swapの概念図
登場人物は、主に3者です。
- 自動マーケットメーカー
- 流動性の利用者
- 流動性の提供者
自動マーケットメーカー(以下、AMM)は、取引に関する注文を事前に指定したアルゴリズムに従って、通貨の流動性プールと連動させることにより市場を形成します。流動性プールとは、各通貨ペアで構成される貯蔵庫のようなイメージです。AMMは、プール内の通貨量に応じて自動で交換価格や手数料を計算する仕組みとなっています。
流動性の利用者は、銀行などと同じように手数料を払うことによって、プールが存在する通貨について交換することができます。ドル/円の両替と同じイメージです。
流動性の提供者は、自らの通貨ペアを流動性プールに提供することによって、市場がうまく回るように貢献します。自分の資産を預け入れる代わりに、通貨交換で発生する手数料と変動する利息を受け取ることができます。
流動性を提供してあげる代わりに、提供している間の手数料で稼ぐという仕組みです。
もう少し詳しい仕組みを理解したい方は、下記の日銀レビューの解説記事を参考にしてみてください。
▶︎【図解】わかりやすく解説。日銀レビューで学ぶ分散型金融(DeFi)の仕組み。
Liquid Swap(リキッドスワップ)のメリット・デメリット
Liquid Swap(リキッドスワップ)は、管理者の存在しない分散型取引所(DEX)と違い、Binance(バイナンス)という中央集権的な取引所によって提供される流動性プールです。
仕組みは似通っていますので、通常のDEXと同様のメリット・デメリットが存在するとともに、Binance(バイナンス)特有のシステムもありますので、確認しておきましょう。
Liquid Swap(リキッドスワップ)のメリット
Liquid Swap(リキッドスワップ)のメリットは、大きく3つ挙げられます。
- 比較的安定な通貨ペアがリストされている
- 他のDEXと比較してもそこそこの利率が得られる
- 送金の手間がなく、とにかく簡単
1. 比較的安定な通貨ペアがリストされている
Liquid Swap(リキッドスワップ)で提供可能な通貨ペアは他の分散取引所(以下、DEX)と比較して、相対的に低リスクなものが多いです。
後ほど詳細を解説しますが、流動性提供では提供する通貨ペア同士の価格変動が大きいと損失が大きくなります。
他のUniSwapやPancakeSwapでは怪しい草コインペアの割合が非常に多く、利率だけに目が眩むと罠に引っかかって大損してしまいます。
流動性提供ではペア選定が本当に重要ですので、罠が少ないだけでもメリットと言えます。
2. 他のDEXと比較してもそこそこの利率が得られる
Liquid Swap(リキッドスワップ)では、価格変動が相対的に安定なペアに関しては他のDEXと同等の手数料収入を得ることができます。
2021年5月10日現在の各通貨ペアの利息収入の平均値と中央値は下記の通りです。
- Binance:平均値 22.07%, 中央値 17.01%
- PancakeSwap:平均値 116.03%, 中央値 101.08%
PancakeSwapは預けるだけで1年で倍以上のペアがめちゃくちゃ多く、一見魅力的に見えますが、それだけリスクもあるのです。ここではそういったペアへ投資する戦略は紹介しません。
比較的安定な通貨ペアであるステーブルコイン同士(USDT-BUSDペア)で比べると、
Binance:12.5%
PancakeSwap:11.5%
と、ほぼ一緒です。
最近の成長で、BinanceのSwapも良い感じになっています。
3. 送金の手間がなく、とにかく簡単
Binance(バイナンス)では、世界一多くの通貨を取り扱っていますので、その場で手に入れた通貨をすぐに流動性提供に回すことが可能です。余計な送金操作も必要ありません。
他のDEXでは、専用のウォレットへ必要な通貨ペアを送金したり、そのための手数料を準備したりと結構面倒です。
面倒なだけなら良いですが、送金チェーンやアドレスを間違えたりするリスク、ERC-20系の高いガス代などを考えると、上記の点は大きなメリットと言えます。
少額投資家は手数料がバカにならないですし、余計な時間もかからないので便利です。
Liquid Swap(リキッドスワップ)のデメリット
流動性提供の一般的なデメリットについても知っておきましょう。
- インパーマネントロスによる損失の可能性
- 流動性報酬の多くがBNBとして付与される
- 提供主体(Binance)に依存したシステムである
1. インパーマネントロスによる損失の可能性
インパーマネントロスとは、預け入れした通貨ペアの価格変動により、単純にホールドしていた場合と比較して損失が出てしまうことです。
その損失シミュレーションは下記のようになっています。
預け入れした通貨の価値が上がっても下がっても、最初に預け入れした時から変化すればホールド時よりも損失が出ることを示しています。
通貨の価値が上がる方向の場合は、ホールドに比べて目減りしても結局利益が上がるので良いですが、下がる場合には単純に通貨の市場価値が下がることに加えて、このインパーマネントロスが加わるのでダブルでダメージを受けます。
高利率に誘われて、通貨ペア選びをミスると逆に損をしてしまいます。
2. 流動性報酬の多くがBNBとして付与される
これは、メリットともデメリットとも言えるのですが、保守的にデメリットにカウントしました。
Liquid Swap(リキッドスワップ)において、流動性提供による利益は3種類あります。
- 利息
- 手数料収入
- 流動性報酬(BNB払い)
利息と手数料収入については預け入れ通貨で支払われますが、流動性報酬はBNB(バイナンスコイン)で支払われます。そして、Liquid Swap(リキッドスワップ)では、このBNB報酬が一番多くなっています。
例えば、下記のような感じですね。
BNB自体の価格が上昇するならばより大きな利益が得られる一方で、BNBの価格が下落する局面では受け取った流動性報酬はそのまま減っていってしまいます。
つまり、この報酬の受け取り方も考える必要があります。
3. 提供主体(Binance)に依存したシステムである
これは、Liquid Swap(リキッドスワップ)がBinance(バイナンス)という中央集権的取引所によって運営されているという意味です。
通常のAMMは、分散型取引所(DEX)によって行われ、中央集権的な管理者がいないというのが1つのコンセプトとなっています。
Binance(バイナンス)によって運営されている以上、Binance(バイナンス)に関わるハッキングリスクや国家リスク、法整備リスクを同時に抱えることになります。
このことは、しっかり認識した上で利用するようにしましょう。
Liquid Swap(リキッドスワップ)をローリスクで使うポイント
流動性報酬を効率よくもらいながら、ローリスクで運用するコツは、
- インパーマネントロスをできるだけ回避する
- 流動性報酬の利確ルールを決めておく
ということです。
インパーマネントロスをできるだけ回避する
インパーマネントロスを回避するには、価格がほぼ変動しない通貨ペアを選ぶ、すなわち、ステーブルコイン同士のペアを選択するというのが答えの1つです。利率は低く見えますが、それでも10%以上は受け取れるので、株式などと比較しても十分期待値の高い運用方法です。
もう1つの可能性として、価格が変動がほぼ同じ通貨ペアを選ぶ方法がありますが、これに該当するのはBTC / WBTCのみ(違うチェーン上の同じ通貨なので実質同じ通貨)です。他の候補については、探しても見つかりませんでした。一時的にそういったタイミングも存在するかもしれませんが、現実的ではありません。
現時点では、この辺りが候補となります。(2020年5月10日現在)
- BTC / WBTC:利率7.7%
- BUSD / USDT:利率11.75%
- BUSD / DAI:利率14.04%
- USDT / DAI:利率15.46%
- USDC / USDT:利率13.75%
わたしはDAIはちょっと信用してないので、他のペアがメインですね。
流動性報酬の利確ルールを決めておく
報酬として受け取れるもののうち、BNBで付与される分については自分で申請することで初めて受け取ることができます。いつ受け取ってもいいのですが、問題はそのBNBをそのまま保有するのか、すぐに別の通貨に交換するのかだと思います。
ここは手数料の問題などもあるので、人それぞれな部分になります。
ここでは、いくつか考えられる手段を挙げておきますので、ご自身でルールを決めるのが良いと思います。
- BNBのまま保有する(BNB価格上昇を期待)
- 入手したBNBをさらに運用(Binance内にいくつか手段あり)
- BNBをステーブルコインに交換(手数料はかかるが、確実に入手)
- BNBはなかったものとして他の草コインに突っ込む(夢を見る系)
例えば、PancakeSwapが流行っているのは、流動性提供で受け取ったCAKEをさらにステークス(ファーミング)すると、さらにCAKEが増えていくという複利効果とCAKE価格の上昇が重なったからです。
ただ、BNBやCAKEはある程度価格が上昇しきった感もあり、BNBは運用効率もあまりよくない印象です。
ここの運用方法はこれからいいものが見つかればご紹介したいです。
Binance (バイナンス)での実施方法
それでは、具体的な手順を紹介します。
Liquid Swapはハイリスク投資に分類されるため、事前にその内容を理解するための動画とその動画内容に基づく10問の選択式のテストがあります。テストに全問正解しないと機能は利用できませんが、「答えを表示する」というチェックボタンが一番下に出るので、心配する必要はありません。
ここで改めてルールとリスクを確認しておきましょう。
プールが完了すると、「My share」から下記のように流動性収入の発生状況などが確認できます。
「Claim All」で未確定報酬を受け取ることができます。
「Redeem」で流動性提供を解除することができます。
Liquid Swapは操作がとても簡単なところもいいですね。他のDEXではもっとたくさんのステップが必要になります。
リスクを理解して使いこなそう
この記事では、Binance(バイナンス)のLiquid Swap(リキッドスワップ)を使って効率よく運用する方法について解説しました。
流動性提供は、やり方を選べば比較的ローリスクに抑えつつ、継続的に収入を得ることが可能です。現在の環境が維持される限りは続けていこうと思える手法です。
一方で、やり方を間違えると、思わぬところで損失を被ってしまいます。
利率が高いということは、それだけ変動リスクを背負っていることは忘れずに運用していきましょう。