この記事ではアルトコインの変動リスク(ボラティリティ)について比較しています。
目次
ボラティリティとは?
ボラティリティ(Volatility)とは、日本語で「不安定さ、変動性」を意味し、投資においては資産の価値変動の激しさを指します。
ボラティリティは資産投資におけるリスクの1つです。
リスクとは、悪いことを指す訳ではなく、変化する可能性が高いという意味です。
つまり、大きく利益が出る可能性もあれば、大きく損失を被る可能性もある状態です。
アルトコインのボラティリティは非常に大きいですが、その中でも程度は異なります。
この記事では資産投資の参考となるようアルトコインのボラティリティについて比較します。
他の資産アセットとアルトコインのボラティリティ比較
アルトコインを含む暗号資産(仮想通貨)は非常にボラティリティの高い投資アセットです。
参考までに米仮想通貨取引所であるErisX社より発表された2019年1月から2020年6月までのボラティリティを比較データを見てみます。
2019-2020年のボラティリティ比較
2020年3-4月は全てのアセットで大きくボラティリティが上昇していますが、その他のにおいて米国S&P500ETFのSPY、コモディティ代表である金ETFのGLDと比較して、暗号資産のBTC(ビットコイン)とETH(イーサリアム)が高いことを示していることが分かります。
また、そのボラティリティの高さは常時30%を超えていることが分かります。
このように、他の資産アセットと比較してアルトコインを含む暗号資産(仮想通貨)は非常に価格変動が激しいということをリスクとして認識しておく必要があります。
アルトコインのボラティリティが高い理由
アルトコインを含む暗号資産(仮想通貨)のボラティリティが他の資産アセットより高くなる理由には、資産としての特徴、現状の取引制度が影響しています。
ボラティリティが高くなる理由には大きく下記の3つが考えられます。
アルトコインのボラティリティが高い理由
- 価格調整がされない(非中央集権的)
- 流動性が低い
- 取引制限が存在しない
価格調整されない(非中央集権的)
アルトコインを含む暗号資産は、基本的にはブロックチェーン技術と暗号化技術により管理者不在の非中央集権的なシステムで管理されています。
これは、法定通貨のように中央銀行が介入することがなく、価値の変動イベントがあっても価値が安定するような操作がされないことを意味します。
もちろん、アルトコインの中にはそういった点を懸念して、価格が安定化するような仕組みを取り入れているコイン(ステーブルコイン)もありますが、現状ではこの点も価格が不安定化しやすい理由の1つでしょう。
流動性が低い
暗号資産(仮想通貨)市場は、株式市場と比較して市場規模が小さく、アルトコイン市場の時価総額はおおよそ66兆円で、暗号資産(仮想通貨)市場全体の39%に過ぎません。
さらに、アルトコインの大部分はETH(イーサリアム)が占めており、その他のアルトコイン時価総額はTOP10でも数兆円規模と非常に小さくなっています。
このことは、ニュースの影響や大規模投資家による資金移動があるとすぐに価格変動が起きてしまうことを意味します。
取引制限がない
アルトコインを含む暗号資産(仮想通貨)には、価格がどんなに変動しても取引を止めるシステムがありません。
例えば、日本株式市場におけるストップ高/安、米国市場におけるサーキットブレーカーのようなものです。
このことは、有事にパニック相場となった場合でも、需給関係のみで価格が変動していくので、結果的に大きな変動率につながります。
時価総額TOP10のアルトコインのボラティリティ比較
それでは、アルトコイン時価総額TOP10のボラティリティを比較します。
参考までにBTCも含めた形で表にしました。
時価総額TOP10のアルトコインのボラティリティ比較
順位 | ロゴ | コイン名 | 時価総額 (兆円) | 1週 | 1ヶ月 | 3ヶ月 | 1年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
– | Bitcoin/BTC | 120 | 59.3 | 81.7 | 91.4 | 68.9 | |
1 | Ethereum/ ETH | 23 | 41.3 | 95.3 | 119 | 91.8 | |
2 | Binance Coin/ BNB | 4.4 | 56.8 | 257 | 190 | 116 | |
3 | Cardano/ ADA | 4.6 | 179 | 147 | 164 | 121 | |
4 | Tether/ USDT | 4.3 | 5.9 | 9.4 | 17.3 | 53 | |
5 | Polkadot/ DOT | 4 | 79.8 | 93.7 | 167 | – | |
6 | XRP/ XRP | 2.4 | 54.7 | 99.6 | 203 | 128 | |
7 | Uniswap/UNI | 1.9 | 400 | 262 | 207 | 64.7 | |
8 | Litecoin/ LTC | 1.5 | 26.3 | 25.6 | 31.1 | 63.7 | |
9 | Chainlink/ LINK | 1.4 | 51.8 | 62.6 | 56.6 | – | |
10 | Bitcoin Cash/ BCH | 1.1 | 63.1 | 104 | 133 | 95.1 |
ボラティリティ指標には過去のデータに基づいて算出するヒストリカル・ボラティリティを用いており、それぞれ1週間、1ヶ月、3ヶ月、1年でサンプルリングした場合の値を算出しました。(「-」は上場してから1年を経過しておらずデータがありません)
短期のボラティリティは直近のイベント・ニュースに影響されてしまいます。
そこで、ある程度のトレンドを把握するため、ここ3ヶ月のボラティリティを比較してみます。
下記は棒グラフにして、ボラティリティ順に並び替えたものです。
全体傾向として、BTC(ビットコイン)と比較してアルトコインはボラティリティが高い傾向にあるようです。
ビットコインよりもボラティリティが低いアルトコイン
BTC(ビットコイン)よりボラティリティが低いものには、LINK(チェーンリンク)、LTC(ライトコイン)、USDT(テザー)があります。
LINK(チェーンリンク)は、ETH(イーサリアム)上で作られたアルトコインで、スマートコントラクトに外部データを提供できる分散型データ管理システム(オラクル)のミドルウェアです。例えば、DeFi(分散型金融)でのスマートコントラクトとチェーン外の情報を結びつける目的で需要が増加しています。
LTC(ライトコイン)は、「暗号資産の銀」と呼ばれるように、2011年10月に公開された歴史の長いコインです。基本的な性質はBTC(ビットコイン)と同じですが、発行上限枚数が4倍、取引処理速度が1/4ということで、より現実的に決済通貨として使用されることを目的としたコインです。アルトコインの中でも時価総額が高く、安定した価格を維持しているコインの1つです。
USDT(テザー)は、1ドル=1USDTとなるように価値が維持されているコインです。このコインは他のコインと違いTether Limited社により運営されており、中央集権的な特徴を持っています。暗号資産の価値安定を目的とするステーブルコインの代表格で、多くの取引所で基軸通貨として利用されています。
ビットコインよりもボラティリティが高いアルトコイン
逆に、BTC(ビットコイン)よりもボラティリティが高かったアルトコインには、UNI(ユニスワップ)、XRP、BNB(バイナンスコイン)、DOT(ポルカドット )、ADA(カルダノ)、BCH(ビットコインキャッシュ)、ETH(イーサリアム)がありました。
先に述べたとおり、ボラティリティが高くなるにはいくつか理由が考えられます。
- 時価総額が低く、急に価値が変動した
- アルトコイン価値に影響するニュースが出た
- 順調に需要が伸びている
いくつか例をみてみます。
UNI(ユニスワップ)は、分散型金融(Difi)の中でも分散型取引所(DEX)を担うコインとして注目を集めています。日中央集権的であるため手数料が安く、24時間いつでも取引ができます。
最近3ヶ月の価格変動を見ると、3月上旬に2日間で120%上昇している部分があり、これがボラティリティの高さに影響しました。明確な理由は不明ですが、ボリュームがそれほど大きくないので、UNIのバージョン3へのアップデートの噂が影響したのかもしれません。
XRPは、特に大口の送金・海外送金に特化したアルトコインで、銀行間のブリッジ通貨として知られています。2020年末にSEC(米証券取引委員会)がリップル社のGarlinghouse CEOと共同創設者のChris Larsen氏を提訴したことで大暴落が起きました。また、2021年1月にはSNSサイトRedditで話題に上がり、価格が乱高下するという形で、直近は大きな価格変動が起きています。
このようにアルトコインは、時価総額が低く1つのニュースで大きく価値が変動するリスクを抱えています。
ボラティリティの分散も戦略の1つ
このようなボラティリティの変化や比較をした上で投資にどう活かせるか。
1つの考え方としては、コインの種類によるボラティリティの分散が考えられます。
例えば、保有アルトコインが非常にボラティリティが高い場合、相対的にボラティリティの低いステーブルコインをポートフォリオに加えることで、リスクが分散されます。
また、そもそもアルトコインへの投資自体が無くなってもいい金額でハイリターンを狙っているというポジションの人は、時価総額の低いよりボラティリティの高いコインに投資していくでしょう。
今回はリスクの観点から使用しましたが、一般に、ボラティリティ指標は投資の入りタイミングに利用されることが多いです。投資戦略として知っておいた方がいいものの1つですので、この際に学んでみるのもいいかもしれません。
ボラティリティを把握してリスクを管理しよう
この記事ではアルトコインのボラティリティについて、他の資産アセットとの比較、ビットコインとの比較、アルトコイン同士での比較をしてきました。
価格変動リスクは、投資における大きなリスクの1つです。
大切な資産を運用する上で、どのくらい価格が上昇・下落する可能性があるのかをあらかじめ予測しておくことでパニック売りを回避することもできます。
ご自身の大切な資産を運用する場合は、ボラティリティの把握も忘れないようにしましょう。
アルトコイン全般のリスクはこちらをご参照ください。
それでは良い投資生活を送れることを祈っております。